〜スペシャル背景集〜
2002年10月に公開した『さんぽ日和』は、はじめての水彩画風の背景を使ったゲームとなりました。先に公開されたデジタル絵本『雨と太陽』でも同じく水彩画風背景でしたが、ゲームになるとカスタム256色に発色が限定されてしまうため、これまでは水彩画ならではの味が失われてしまうのではないか…とあえて避けていたのでした。このコーナーでは、256色に変換する前のフルカラー画像で『さんぽ日和』の背景の世界を見ていただこうと思っています。
おじいさんの家 |
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主人公のおじいさんの家。名付けて下町風半田舎ほのぼのスタイル家屋(長っ!)。周りに生活感を出す木材とか洗濯竿などを置こうかどうしようか迷ったが、結局なんにも置かないことに決定。オープニングで上下にカメラが移動することを考えて通常よりも上下を大きめに描いています。これ以外の部分(タンスやテーブル、池など)はすべてドット絵で描いています。
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竹林 |
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竹蔵じいさんがいる竹林前の道。最初は左のような明るい秋らしい色彩にしようと思ったが、途中でいやな予感がしてキャラクターを背景前に置いてみると見事にキャラクターよりバックの色が目立ちすぎなことに気付く。秋にこだわらず地味な色で前面のキャラクターを浮き立たせる方針へ。 |
喫茶前 | | 喫茶店 |
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喫茶店とコンビニがあるところ。踏切も建物もすべてドットで描いたためこんなにスッキリ。
| | 喫茶店の中身も元はこんなにスッキリ。あとはまかせたと言わんばかりだ。
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Art Dabblerというペイントソフトは水彩画や油絵タッチの絵を簡単に描くことができて作者もお気に入り。昔はタブレットのペンを使ってまるで画用紙に描くかのようにかいていたが、今ではマウスだけで描くのになれてしまい、こっちのほうが楽に絵がかけるようになった。しかし筆の強弱を出すような線はタブレットじゃないとむずかしい。
駅前 | | 駅のホーム |
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木造のいかにもというような古い駅。これは映画サトラレに出てきた駅をモデルに変更を加えて描いたものです。村の駅にしては大きいが、これは電車を描かなくてもいいようにと横長にしたのだ。
| | 夢か現実かわからないところになるようにイメージ。この村を出発するのもこの村に帰ってくるのもここからなのである。最初、駅のホームまでは作らない予定だったが、イベントを作って行くにつれて必要と思いあとから描きました。
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駅の中 |
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光のさす暗い駅の待ち合い室。『さんぽ日和』の中ではもっともムードある場所かも知れない。当初看板などはクリック操作ですべて取り外しできるようにしようと考えたが、背景作成の段階でまちがって看板やポスターを合成してしまう。千葉県の外川駅内部がモデル。
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屋形船のりば | | 遠景 |
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ベースの絵だけではこのものたりなさ。屋形船が手前のイスの後ろを通ることを想定してこのシーンでもっともポイントとなるイスや傘は別で描いたのです。
| | 観光地っぽい雰囲気も出したかったので、こんな感じの見通しのいいスポットも用意。秋満開の景色になりました。
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キャラクターと背景の大きさを合わせるのは正確にやろうとするとなかなか大変。僕は主人公キャラクターの全体画像1枚をキューティーマスコットでマスコット化して、背景を描きながらときどきマスコットをアクティブにして画面にあわせながら地面の位置を決めたりしています。
公園 | | 寺前 |
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公園は所沢の航空記念公園がモデル。実際にはとても広い公園なのだが、ゲームに出てくるのはこの入り口部分だけ。
| | 寺の入り口は木々につつまれた階段がどーんとある。ちょいと木の遠近感がおかしいが芸術はそんなこと気にしないのである(笑)。
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坂道 | | オープニング俯瞰図 |
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これはお蔵入りになった坂道。寺前から竹林の間に入る予定だった。のぼるにもくだるにもキャラクターの拡大縮小を駆使しなくてはならず、なめらかな動きがむずかしくお蔵入りに。右の芝生あたりにのほほん像とか置こうかなと思ってました。
| | いちばん最初に出てくるシーンですね。このフカンのままで通常の家のシーンにしてしまってもいいなと思っていたが、おじいさんが小さい上に斜上からだと表情もわかりづらいと気付き、屋形船のようにアップ画像を出すのもなんなのでそれはやめておいた。
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回想シーン |
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もっとも不可思議な思い出イベントで登場した昔の町並み。『サムライ』のときはほとんどの画像を最初から白黒で描いたが、これは色つきで描いてから後で白黒画像に変換した。
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いかがでしたか?さんぽ日和背景集!背景づくりは毎回とても時間のかかる大変なところ。背景づくりの最中には何度か「この作業はいつおわるのだろう…」と思うこともしばしば…。今回のゲームでは水彩画タッチにすることで、またいつもとは違った新鮮な気持ちで取り組むことができました。そしてこのラフタッチこそが、『さんぽ日和』独特のあたたかさに一役かってくれたのだと思っています。